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冷えすぎたカナダ・トナカイはインディアンの仲間だったらしい
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「ラテ?」

 小さい頃、いつだったか、まだ水汲みだとかそのくらいの仕事しか任せてもらえなかった頃。
 そうして名前を呼ばれると鼻がつんとなるようなかんじがして、気がついたら目の前がくしゃくしゃになって、
 頭が痛くなってうなだれたら涙がたくさんたくさん落ちて、ああ自分は今泣いているのだとやっとわかった。

 母は泣き出しそうなときに名前を呼ぶ。はっきり呼ぶ。
 逆か?名前を呼ばれると泣きたくなる?

 父の名前は知らない。村の皆は騎士様だとかあの方だとか、言うけれどそう位の高いひとというわけではなかったそうだ。
 母も父の名前は言わない。愛しているとか言うけれど名前は言わない。
 だから父の名前を知らない。

 尋ねたら皆泣きたくなってしまうのだろうかと思った。
 口に出されたらたまらなくかなしくなってしまうのだろうかと思った。
 ましてそれを自分がするなんて母はどう感じるのだろうと思った。

 だって母の髪は赤いのだ。
 そこで自分の髪ときたら金色だ。

 どうすればいいのかわからないのだ。尋ねることも、興味を持つことも、
 どれもこれもかなしくさせてしまうのなら自分はどうすればいいのかわからないのだ。
 それがかなしいのか、なんなのかもよくわからなかったけれどとにかく、

 そうしてそういうときに名前を呼ばれると、涙が出てしまうのだ。

 たまらなく泣いてしまいそうになるのだ。


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